連休初日w

 ロシアのウクライナ侵攻に対する一つの見解をぜひ紹介したくて。
 この連休期間中にお読みください。 例の鮫島浩さんが、要約してくれています。
 重要です。
引用はじめ「バイデン政権の欺瞞と米国メディアのプロパガンダ〜米国の哲学者・チョムスキーの警鐘
2022年4月28日 2022年4月28日 政治を読む 3件

現代における知の巨人と言われる米国の哲学者ノーム・チョムスキー。

ウクライナ戦争に対するバイデン政権の欺瞞や欧米メディアの偏向報道について、彼が冷徹に批評するyoutube動画(日本語字幕付)が素晴らしいというコメントがSAMEJIMA TIMES投稿欄や私のツイッター返信欄に相次いだ。

さっそく見た。米国のジャーナリストであるジェレミー・スケイヒルとの1時間あまりのやりとりに引き込まれた。

そのなかでもニューヨークタイムズをはじめ米国メディアが米政府の「戦争プロパガンダ」に加担する様子をリアルにえぐりとる部分は必見である。

オリバー・ストーンにしろ、ノーム・チョムスキーにしろ、戦時下で「ロシア=悪、ウクライナ=正義」の一色に染まる国内世論を恐れず、自国の政府やメディアを厳しく批評する「言論の自由」が貫徹されていることに米国社会の底力を感じる。

米国留学を売りに国際社会に精通しているかのような顔をしてバイデン政権の主張をただ代弁するばかりの外交安全保障専門家や、欧米メディアの報道を垂れ流すばかりの国際報道記者がテレビに溢れかえる日本社会とは大違いである。世論形成を主導する「知識人」の力量の差が、日米社会の歴然とした差を生み出している。

米国社会は近い将来、バイデン政権の欺瞞に激しい鉄槌を加えるだろう。この回復力・修正力こそ、米国の活力の源だ。

一方、日本社会はバイデン政権と欧米メディアに追従して善悪二元論を振りまいた政治家や外交安全保障の専門家・記者たちの「罪」をいずれ忘れてしまうだろう。いまなお総括や検証という知的行為が根付いていない未成熟な社会なのだ。

コロナ禍にしろ、ウクライナ戦争にしろ、この1〜2年に私たちのくらしを襲った危機は、私たちの国で大きな顔をしてテレビに映っている「専門家」たちの識見がいかに底浅いかを浮き彫りにしたのではないか。

日本マスコミが流布する「ロシア=悪、ウクライナ=正義」の善悪二元論に覆われた日本社会を見つめ直すためにも、ノーム・チョムスキーのインタビュー動画が広く視聴されることを願って、私なりに要旨をまとめてみた。YouTube動画の下に要旨が続くので、お時間が限られている方は要旨だけでもご覧いただきたい。

ノーム・チョムスキーのインタビュー要旨(Qはジャーナリストの質問。日本語字幕を参考にSAMEJIMA TIMESが要約)

■バイデン政権は「ロシアとの交渉」を拒否
Q 私たちはウクライナから発信される恐怖、流血、虐殺、殺戮と同時に、米国が欧州で軍備を拡大させる現実を目の当たりにしています。欧州各国政府は軍備を増強し軍事産業を拡大させると公言しています。米国は世界最大の武器商人です。

 チョムスキー教授はロシアのウクライナ侵攻について「国家による侵略行為であり、2003年の米国のイラク侵攻や、1939年のソ連とドイツの両方によるポーランド侵攻と並び、歴史に刻まれると指摘しています。では、このロシアの侵攻に対する米国やNATO、EUの対応についてはどう考えますか?

ウクライナの自衛努力を支援することは正当だが、支援の規模を慎重に調整しなければ、いたずらに紛争をエスカレートさせ、ウクライナの破壊につながるだけである。

ウクライナをさらなる破壊から救うために必要なことは、交渉による解決である。この戦争が終わるのは二つのケースしかない。

ひとつは、どちらか一方が破壊される場合だ。ロシアが破壊されることはない。つまりウクライナが破壊される場合である。

もうひとつは、交渉による解決だ。ウクライナの人々をさらなる大惨事から救うため、交渉による和解の可能性を探ることが最大の焦点となるべきである。

その際、プーチンや彼の取り巻きの胸の内を覗こうとしてはいけない。それを推測することはできても、それをもとに判断することは賢明ではない。

一方、バイデン政権の姿勢は明らかだ。それは「いかなる交渉も拒否する」というものである。

この方針は、2021年9月1日の共同方針声明で決定的となり、その後11月10日の合意で強化された。その内容をみると「基本的にロシアとは交渉しない」と書いてある。そしてウクライナに「NATO加盟のための強化プログラム」へ移行することを要求している。その内容は、ウクライナへの最新兵器供与の増加、軍事訓練の強化、合同軍事演習、国際配備の武器の供与などだ。

これはバイデンがロシアの侵攻を予告した前に提示した方針であり、ウクライナ政府がロシアとの交渉を通じて解決する選択肢を奪った。

バイデン政権の強硬姿勢が、プーチンとその周辺を軍事侵攻へ駆り立てた可能性がある。バイデンがその方針を貫く限り「最後の一人になるまで、ウクライナ人は戦え」というのと同じだ。

ウクライナの人々に自衛のために十分な軍事的支援を与えつつ、紛争がエスカレートして大規模破壊につながらないような軍事支援のあり方や、侵略者を抑止するための有効な制裁措置のあり方を検討することが非常に重要である。

ロシアにはウクライナを破壊する力がある。交渉による解決はウクライナの破壊に代わる唯一の選択肢である。

■ゼレンスキーの「交渉」を阻むバイデンと欧米メディア
Q ゼレンスキー大統領は米国や西欧のメディアからもてはやされている。過去の歴史的人物になぞらえて一種のヒーローのように劇画化されている。メディアは彼の発言の一部を切り取り、最後まで戦い抜く指導者のように意図的に見せている。

 しかし、ゼレンスキーやウクライナの交渉担当者の発言を忠実に読むと、彼らはこの紛争を交渉によって終わらせようとしていることが見えてくる。ゼレンスキーを祭り上げた神話を永続させるために、欧米メディアが意図している役割についてうかがいたい。

まったくその通りだ。ゼレンスキーは政治的解決の可能性について述べ「ウクライナの中立化を受け入れる」とも発言している。しかしメディアはそう報道していない。逆にゼレンスキーをチャーチルになぞらえ、その型に当てはめようとしている。そのような人々によって彼の意図は脇に追いやられてしまった。

ゼレンスキーがウクライナの人々が生き残れるかどうかを気にかけているのは明らかだ。だからこそ、ロシアとの交渉の基礎となりうる妥当な提案を次々と打ち出している。政治的解決の大筋の方向性はロシアとウクライナの双方で以前からかなり明確になっている。

もしバイデン政権がロシアの侵攻前から交渉による解決を真剣に検討する気があったのなら、今回の進攻は避けられたであろう。

米国にはロシアの侵攻前にふたつの選択肢があった。

ひとつは、強硬姿勢を貫くことで交渉を不可能とし、戦争に発展させること。

もうひとつは、政治的解決の選択肢を追求することだった。戦争が勃発してその可能性は弱まっているものの、政治的解決の基本的条件はかなり明確なので、まだ実現できる可能性は残っている。

■ウクライナの「メキシコ化」を提案するロシア
ロシアのラブロフ外相は侵攻当初、ロシアには二つの主要な目的があると発言した。ウクライナの「中立化」と「非武装化」である。「非武装化」といっても、すべての武器の所有を放棄することではない。NATOとの相互作用により、ロシアを標的にした強力な武装を排除するということだ。

ラブロフ発言が意味するのは、ウクライナを「メキシコ化」するということである。

メキシコは自分の道を自分で選択することができる、ごくふつうの主権国家として存在している。しかし仮にメキシコが中国が主導する軍事同盟に参加して最先端兵器や中国製武器を米国との国境に配備し、人民解放軍と共同軍事作戦を実施し、中国から軍事訓練や最新兵器を受けるという状況が起きたら、米国は絶対に許さない。

ラブロフ外相が提案した「ウクライナをメキシコ化しよう」という提案は、実現可能なオプションだったのだ。

しかし、米国は自分自身が絶対に許さないと考えていることを、ロシアに対して実行しようとしたのである。

ロシアとウクライナに横たわるのはクリミアとドンバスの問題だ。

クリミアは議論の俎上に乗っていない。米国は望まないかもしれないが、(ロシアに併合された)クリミアの人々は非常に満足していると思う。それなのに米国は「我々は決して譲歩するつもりはない」と言っているのだ。それが永遠に続く「紛争の火種」となっているのである。

ゼレンスキーは賢明なことに「クリミアの問題は議論を先送りしよう」とも言っている。それは理にかなっている。

■双方が暴力を重ねたドンバスは住民投票で解決を
もうひとつは東部ドンバス地域の問題だ。

この地域では8年間、双方に向けて激しい暴力が行われてきた。ウクライナによる砲撃、ロシアによる砲撃、地雷だらけ、暴力だらけである。

OSCE(欧州安全保障協力機構)や欧州のオブザーバーが現地から定期的に状況を報告してきた。報告書は公開されており、誰でも読むことができる。彼らは暴力の原因を解明しようとはしていない。それは彼らの任務ではないからだ。しかし彼らは暴力の過激さが日に日にエスカレートしていることを語っている。

(ウクライナに親米政権が誕生した)2014年のマイダン革命以降、ドンバス地域で8年間続いた紛争で、この地域と周辺住民の約1万5000人が殺されたと推定されている。ドンバスについては何か手を打たなければならない。

適切な対応策は住民投票だ。ロシアも受け入れるだろう。国際的に監視された住民投票で地域の人々が何を望んでいるかを確認すべきである。

侵攻前に可能だったのは「ミンスク2合意」の実施だ。

この合意では、より広範なウクライナ連邦のなかで、この地域に何らかの形で自治権を認めることが定められている。スイスやベルギーのように連邦制がしかれている地域と同様、紛争はあっても連邦制の中に組み込まれているような形だ。その可能性はあった。うまくいくかどうかはやってみるしかない。

しかし、米国はそれを行おうとせず、極めて好戦的な立場を公の立場で表明してきた。

主要なマスコミは一度たりともそのことを指摘していない。時折、紙面の余白で2021年9月1日の米国の「交渉拒否」の公式見解や、11月にこの方針を再提示したことについて触れているくらいである。

米国は極めて好戦的な立場を主張してきたが、その逆を選ぶ選択肢もあった。主たる目的をウクライナの「中立化」と「非武装化」におく、つまり、メキシコ式の秩序を選ぶという選択だ。クリミアは「今は対処できない」というゼレンスキーの賢明な立場を受け入れる。ドンバスは国際的に監視された住民投票で自治権を伴う何らかの枠組みを決定する努力をする。

ロシアがこのような提案に同意するかどうかはわからないが、米国が賛成したかどうかもわからない。確かなことは、バイデン政権がそれを公式に拒否したという事実である。

バイデン政権がそれを受け入れるように仕向けることはできるだろうか? それもわからないが、やってみるしかない。それは私たちが望める唯一の道である。

どんな問題でも最も重要なのは「私たちは何ができるか」であり、「他の誰かが何をすべきか」ではない。その点についてこそ、私たちは話し合う価値がある。少なくとも私たち(米国人)は「米国の政策」については、他のことと違って、多くのことを実行できるのだ。

■バイデン政権は外交的解決をめざす交渉に参加すべきだ
Q バイデン政権の高官がテレビのトークショーで、ロシアの根本的な弱体化を目的として戦争計画を打ち出し、ウクライナ戦争はロシアを弱体化させる目的の達成に極めて有効である、と話している。バイデン政権は最終的にプーチン政権を崩壊させることをどの程度目指しているのか?バイデンが「プーチンは辞めるべきだ」と言及して騒ぎになったこともあった。多くの人は、バイデンの発言に影響されすぎているのではないか?

重要なのは「米国は何をしていないのか」に気づくことだ。バイデン政権がロシアとの交渉を拒否する強硬姿勢をいまだに変更していないのは、米国のマスコミがわざと国民に気づかせていないからであろう。しかし、ロシアはそれをとっくに知っている。ロシアは米国が交渉拒否の姿勢を変える気がないことに気づいている。

バイデン政権のもうひとつの不作為は、政治的解決を目指す外交交渉に参加しようとしていないことである。

いま外交的解決を前進させる力を持つ国がふたつある。中国と米国だ。中国はこの役割を拒否して批判されている。しかし米国は批判されていない。だからバイデン政権は役割を引き受けようとしない。

バイデン政権の立場は「ロシアにできることなどたかが知れている。さあ、好きなだけウクライナを破壊してくれ」「最後はロシアは世界から退場することになる。そして、確実に未来がないようにしてやる」「ロシアは破綻した方がいい」ということだ。ゼレンスキーをチャーチルになぞらえた発言も、その意味するところは「ウクライナを滅ぼせ!」だ。

米国は交渉不参加という不作為をやめるべきだ。中国が「やらない」として非難されている政策を、米国自身が「やる」べきである。外交的解決を前進させるための努力に、米国自身が直接かかわるべきなのだ。

■戦時下に国民を騙す情報操作は簡単だ
Q 私たちはウクライナで恐ろしい数のジャーナリストが殺害されているのを目の当たりにしている。ウクライナから勇敢で重要なジャーナリズムが発信されており、その多くはウクライナの記者たちによって行われている。この報道は西側に利用されることなく、それ自体で独立している必要がある。

 しかし、ワシントン、ベルリン、ロンドンのスタジオに戻ると、まったく別の形のメディアによる政治活動が起こっている。特に権力のある放送メディアで働く多くのジャーナリストはいま自分たちがしていることが米国とNATOの立場を支持し、偏った結果や行動を伝えるプロパガンダに協力することではないかと考えていると思える。

 この動きは、バイデン政権が未検証の情報を表に出し、化学兵器の使用計画に関する自分たちの情報をメディアに押し付けることによって、メディアを操作してきたことと同時に起きている。

米政府のこのようなメディア操作は目新しいものではない。米政府は今、情報を所有するだけではなく、自国のメディアとジャーナリストを利用し、戦争協力の一環として広めている。

第一次大戦で英国情報省が設立された時、広範囲かつ組織化された形でメディア操作は行われた。情報省の目的は、ドイツの戦争犯罪に関する恐ろしい物語を広めて米国を戦争に参加させることだった。ウィルソン大統領の時にその試みは成功した。

当時の米国のリベラルな知識人たちは、”うまく”取り込まれた。英国による情報操作だとわかって受け入れたのである。彼らは「英国情報省が我々を惑わすためにでっち上げた、この恐ろしい犯罪を止めなければならない」と考えたのだ。

ウィルソンは国民を”うまく”騙すために、公共情報省を設立し、米国人がドイツに関わるあらゆるものを憎むように仕向けた。ボストン交響楽団はベートーベンを絶対に演奏しないとかね。

レーガンは「広報外交室」を持っていた。国民やメディアを丸め込む機関だ。政府にとって情報操作は難しいことではない。

1954年に米国がグアテマラの民主政府を転覆させようとした経緯を、ユナイテッドフルーツ社の広報担当者が明確に述べている。その後、何十万人もの人々を殺すことになる凶悪で残忍な独裁政権は、米国の支援を受けて樹立したのである。

同社の広報担当者はメディアから「この独裁政権を支持するようにジャーナリストを利用したあなたの会社の活動を、どう思いますか」と聞かれ、「ええ、利用しました。でも、ジャーナリストたちがどれほどこの体験に熱狂していたかを忘れないでください」「難しくなどなかったですよ。だって彼らが自らそれを望んでいましたから。餌としていろんな偽情報を与えましたよ」「ジャーナリストたちは国家とその暴力とテロを支持したかったので、むしろ喜んでいたくらいです」と答えた。

これは現場のジャーナリストたちの話ではない。あなたが言うように「ジャーナリズム」は二種類に分類される。それはどの戦争にも言えることだ。

1980年代のニカラグアや、中米の戦争では、現地に優れた記者がいた。ベトナム戦争でも真剣で勇敢な仕事をし、そのために多くの現地ジャーナリストが苦しんでいた。ところが、現場から遠く離れたオフィスの報道室に行くと、ジャーナリズムはまったく違って見える。これがメディアの真実だ。

■ニューヨークタイムズも例外ではない〜ジャーナリストの実態
私たちは遠い過去を振り返る必要はない。ニューヨークタイムズを見ると良い。世界最高峰の新聞社だが、そこでの仕事は決してハードルが高いものではない。

国際安全保障を専門とする記者が「戦争犯罪人にどう対処すればいいのか?」という記事を書いた。「どうすればいいのか?私たちはお手上げだ。戦争犯罪人がロシアを動かしているんだ。どうやってこの男と付き合えばいいんだ?」と。

この記事の興味深い点は、それが出たことよりも、世論がそのような記事を期待していたため、嘲笑を誘わなかったことだ。実際、それに対するコメントはなかった。

私たちは戦犯の扱い方を知らないのか? もちろん知っている。実際、つい2、3日前にそれを明確に示す報道があったのだから。

米国における最も代表的な戦争犯罪者の一人は、アフガニスタンとイラクへの侵攻を命じた人物である。戦争犯罪者として彼を超える人間はいない。

実はアフガン侵攻20周年にあたる2021年10月に、ワシントンポストがその男にインタビューをした。この記事は一読に値する。そこには、愛すべきおっちょこちょいの爺さんが孫たちと遊んでいる様子、幸せな家族、彼が出会った素晴らしい人たちの肖像画を披露している様子が書かれていた。つまり、米国は「戦犯の扱い方」をよく知っているのだ!

このコラムが世界最大の新聞に掲載されたこと自体興味深いが、それよりもはるかに興味深いのは、読者から一言のコメントも投稿されなかったことである。

ユナイテッドフルーツ社の広報担当者だったトム・マッカンの言葉は、あなたが先ほどおっしゃった問題に見事に答えている。「奴らはジャーナリストとして経験値をいかに上げるかにしか興味がないんだ。それがプロパガンダかどうかなど、実は、どうでもいいことなんだ」

■戦争犯罪に対する米国の矛盾に冷ややかな国際社会
Q 米国は、自国の行為を管轄する国際的な司法機関に一貫して断固反対してきた。2002年にブッシュ大統領はのちに「ハーグ侵攻法」として知られる超党派の法案に署名した。「米軍は、戦争犯罪の容疑、あるいは戦争犯罪の捜査のために、国際刑事司法裁判所のあるオランダのハーグに連行された米軍兵士を解放する目的として、オランダで軍事行動を取ることが許可される」という内容だ。多くの活動家や市民的自由主義者はこれを「ハーグ侵攻法」と呼んでいる。

 バイデンは「プーチンは戦争犯罪人である」と公言し、戦争犯罪裁判を要求している。これは明らかに矛盾した発言だ。米国はユーゴスラビアやルワンダを被告とした国際刑事裁判だけは支持したが、実際はロシアと同様、国際刑事裁判所の設立に関する条約の批准をいまだに拒否している。

 教授も私もウクライナで今まさに大規模な戦争犯罪が行われていることは確かだと認識している。いま行われている戦争犯罪の大部分がロシアによるものだとしても私は驚かないが、ウクライナによる戦争犯罪がないわけではない。両方の確かな証拠映像があるが、はっきりしておきたいのは、ロシアがウクライナで組織的な戦争犯罪を犯していることだ。

 しかし事実として、米国自身が国際刑事裁判所を弱体化させ、条約の批准さえ拒否しているのである。なのになぜバイデンは戦争犯罪裁判を呼びかけるという矛盾した発言ができるのか?

 キッシンジャーは言うに及ばず、チェイニーやブッシュが自由に歩き回ることが許されているのは明らかにおかしい。米国自身が、世界のすべての権力者に対して等しく持つべき、国際刑事裁判所の管轄権を認めていないのだ。

戦争犯罪の大部分はロシアによって行われたことには異論はない。米国自身が国際刑事裁判所の権威を完全に無視していることも事実である。

しかし実はもっと重大なことがある。米国は、国際刑事裁判所の判決を拒否し続けている世界で唯一の国なのだ。

1986年、米国の小さな犯罪のひとつなのだが、米国はニカラグアに対する戦争について世界法廷の判決を拒否した。判決は、米国の行為を「不法な武力行使」つまり「国際的テロリズム」と断罪し、米国にその停止と多額の賠償を命じた。ところが当時のレーガン政権と議会はこの判決に反発し、むしろ犯罪行為をエスカレートさせたのだ。ニューヨークタイムズはそれを支持し、社説で「裁判所の判決は無意味だ。裁判所自体が敵対的だからだ」と主張したのである。

ニカラグアは当時、国連安保理の議長だった。彼らが用意した決議は米国に言及せず、すべての国に国際法を遵守するよう呼びかけるだけの内容だったが、米国はそれでも拒否権を発動した。米国は安保理に対し「国家は国際法に従う必要はない」とまで発言したことが記録に残っている。

その後に開かれた国連総会でその決議は圧倒的多数で可決された。反対したのは米国とイスラエルだけだった。「国際法など遵守する必要はない」と考える二つの国家だけが反対したのである。

米国に関する限り、そのようなことが歴史のすべてではないが、共和党によれば、そのような歴史は、国民の分裂を招き、気分を悪くさせるから、教えるべきではないそうだ。教えない方がいい、教えないのだからあえて誰かに言う必要もない、という論理である。だから事実上、だれもそのことを知らないのである。(中略)

■ロシアへの経済制裁に加わるのは欧米と名誉白人の日本だけ
米国は、なぜ世界の一部しかロシアへの経済制裁に加わらないのかを理解していない。

世界地図をみて「制裁国一覧マップ」を自分で作ってみれば一目瞭然だ。英語圏の国々、欧州、アパルトヘイトの南アフリカが「名誉白人」と呼んでいた日本、および旧植民地の数カ国。たったそれだけである。

その他の国々はこう思っている。「ああ、また醜いことが起きてるな。でも、これまでと何が違うんだ? 何を騒いでいるんだ?」「なんで、お前らの偽善に巻き込まれなきゃいけないんだ?」「なんで、米国にはそのことが理解できないんだ?」「どうしてこいつらは、我々のように犯罪を非難することができないのだろう?」「まあ、奴らも我々と同じように犯罪を非難しているけれど、奴らは我々がしない『一歩』に踏み込んでいる」

米国は自国の文明のレベルを上げて、過去の被害者の立場に立って、世界を見なければならない。そうすれば、ウクライナに関してももっと建設的な行動を取ることができるはずだ。

(※チョムスキーはこの後、ロシア制裁に加わらないインドと中国の分析、米中関係の読み解き、さらにはロシアの侵攻が米国と欧州に与えた影響について考察を深めていく。とても興味深い内容なので、ぜひ動画で視聴してほしい)

■権力者に疑問を呈する仕事が「反逆行為」として攻撃される時代
Q ウクライナで起こっている人間破壊と大量殺戮の恐怖を見ながら、私たちは自分たちの政府の行動がもたらす長期的な結果について考えなければならない。残念なことに、あなたや私や他の人がこれらの問題を提起するまさに今、米国メディアの状況下では、ネオ・マッカーシズム的な反応一色に染まり始め、支配的な報道や権力者の動機に疑問を呈することは、反逆行為、裏切り者、プーチンの手先、ルーブルで報酬をえている人間として扱われるようになっている。これは非常に危険な傾向で、国家に疑問を呈することが公然とかつ常に「売国奴」と同一視されてしまっている。

それは昔からある話です。

Q SNSで多くの人が自分のコメントを拡散できるようになり、メッセージの結束が強まった。教授はそれについて著書がおおいが、私が言いたいのは、それが今、私たちの文化のあらゆる面に浸透し、権力者に疑問を呈することは、ジャーナリストの仕事であり、民主主義社会で責任をもって考える人々の仕事のはずだが、今やそうした行動が基本的に反逆行為として攻撃されるようになってしまった。

いつもそうであったように、私たちの目の前にその劇的な例がある。ジュリアン・アサンジだ。

彼は政府が封印したい情報を国民に開示する仕事をした。ジャーナリストとして完璧な仕事である。その情報には米国の犯罪に関するものもあるが、それ以外のものもある。彼は何年ものあいだ拷問を受け、現在は厳重警備の刑務所に収容され、米国に引き渡される可能性がある。米国で、ジャーナリストがすべきことを勇気を持って行った結果、厳しい処罰を受けるかもしれないのだ。

この件に対するメディアの反応をみてみよう。メディアはウィキリークスが暴露したものすべてを嬉々として利用し、大金を稼ぎ、評判を上げた。そのメディアはアサンジを支持し、ジャーナリストとしての名誉ある義務を果たし、拷問されている人物への攻撃に対し、何らかの擁護をしているのか? 私がみた限り、まったくそうではない。(後略)

ふたりの対談は、ウクライナ戦争でバイデン政権が仕掛けるプロパガンダに欧米メディアが加担し、権力者を監視する健全なジャーナリズムが機能せず、好戦的な世論が高まり、戦争の本質が見失われているという問題提起に行き着く。

チョムスキーの締めのメッセージは善悪二元論に染まる日本社会にも当てはまると思うので、ここに引用したい。

米国はいま、最後のウクライナ人まで戦わせようとしている。もしあなたが少しでもウクライナ人のことを気にかけているのなら、この事実を批判するのは正しい行動です。もしあなたが彼らのことを何とも思っていなくても、構わない。ただ黙っていればいいのです。」引用終わり。

 どうですか?やはりチョムスキーはすごいね。

 はい、今日の昼、若草公園に行った時の画像と、夕方散歩の画像を送って、一日目は終わっていきますw

 そういえば、昨日はヨンニッパーでしたね。
 で、と言うわけではないのですが、先ほど、1968年のシカゴで開かれた民主党の全国大会でベトナム戦争反対を叫んだ学生らを無理やり起訴した事件についての映画を見ました。  感動しましたよ。  機会があれば是非是非ご覧ください。

 ではね、またw